市民のための美術入門3、抽象絵画のすすめ

描いてみたい人のための抽象絵画の考え方や描き方や入り方などについて、できるだけわかりやすい言葉で書いていきたい。姉妹編「1、油絵のすすめ」「2、デッサンのすすめ」とで「絵画とは何か」にも行き着きたい。

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なぜ抽象絵画、か? 5

 とにかく抽象絵画に対する否定的な意識が、その一点を見たことでひっくり返されてしまったのでした。上手い下手とは違う感動が絵画にはありえるのだと言うことにはっきりと気付かされたのでした。
 大学(文学部です)に入ってからは、母校の高校の美術の先生が主催するデッサンの研究所に通うようになりますが、そこでまたその先生と親しかったこの抽象画家とも親しくしていただくことになり、作品もいくつか見せていただく機会に恵まれ、作品の批評も頂き、たちまち私の作品は抽象的な傾向を強めていきました。
 その方はお名前を加藤正衛と言い、中央の画壇にはほとんど没交渉であったため未だに全くの無名の存在ですが、仙台という一地方都市の一隅に住み、大学の医学部の顕微鏡下の図を描く画工としたのわずかな給料で家族を養いながら、仕事の合間のもっぱら夜間にひたすら自分の画境を深めていた人でした。
 若い頃から優れた才能を持ちながら、絵を買ってやろうと言う金持ちから、絵の描き方やモチーフの選び方や配置にまでくだらない注文を付けられたときに「もう絵は売るまい。生活費は職について稼いで、作品は自分の描きたいように描いていこう」と決心したと言うことでした。

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 73歳で病気で亡くなられて、直後に訪れたお宅で奥様から遺作の数々を見せていただいて、その作品の多さと一つ一つにこめられた真摯な追求の深さに驚かされたのでした。日本の近代美術の流れの中では、ゴッホやゴーギャンの流れを汲む感覚的なフォービズムや表現主義の傾向は早くから取り入れられて来ているのですが、セザンヌを出発点とする論理的なキュービズムの空間構成の流れをしっかり把握した画家は少ないと、いつか読んだ記憶があったのですが、この加藤先生の仕事はその空隙を埋める仕事ではなかったのかと思いました。写実的な作品からキュービズム的な単純化や構成化の時期を経て、純粋抽象に入っていっています。
 ここにある作品の写真で見ても、空間の構造について厳しい見方を持っていた人とお分かりいただけるのではないかと思います。ただしキャンバスを買うお金が無かったから殆どの作品は安いベニヤ板に描かれていますし、スケッチやデッサンの多くは広告や反古紙などの裏に描かれていたりします。
 晩年病気になられてからは、毎日一枚づつペンと色鉛筆による小品を描いておられました。その数約300点。若い頃のスケッチなどに基づいてペンの鋭い描線で構成しなおしたものです。何度も描きなおして穴の開いてしまったものには古はがきなどで裏打ちをしてありました。
これが私と抽象絵画の決定的な出会いでした。
(加藤先生の作品をもっとご覧になりたい方は、私のホームページの無名美術館を覗いてみてください)

図版はクリックしてみてください。
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テーマ:抽象絵画のすすめ - ジャンル:学問・文化・芸術

  1. 2006/07/23(日) 09:57:27|
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